【方源】『雑病証治新議』

【組成】天麻・鈎藤・石決明・山梔子・黄岑・牛膝・杜仲・
　　　　益母草・桑寄生・夜交藤・朱茯神

【功用】（１）『雑病証治新議』：平肝降逆・鎮静精神・降圧緩痛

　　　　（２）『中医傷科学』：清熱化痰・平肝潜陽

【主治】肝陽の偏亢・肝風の上乱による頭痛眩暈・失眠抽畜・半身不随。
現代では高血圧・脳溢血・高熱による驚厥・癲癇・メニエール氏病・神経衰弱など。

（１）『雑病証治新議』：高血圧・頭痛眩暈・失眠。
（２）『古今名方』：耳鳴・かすみ眼・震顫あるいは半身不随・舌紅・脈弦数。

【加減】重症者には石決明を羚羊角に変えれば薬力は益々著しくなる。
若し動脈硬化症の後期に入れば槐花・海藻を加える。

【方論選録】『雑病証治新議』：
　本方は天麻・鈎藤・石決明の平肝去風降逆を主とし、
清降の山梔子・黄岑、活血の牛膝、滋肝腎の桑寄生・杜仲などを輔として滋腎し肝逆を平する。
併せて夜交藤・朱茯苓を輔として安神安眠させて失眠を緩解させる。
故に肝厥の頭痛に用いられ、眩暈の良剤である。
若し現代の高血圧による頭痛ということで論ずるならば
本方に用いられている黄岑・杜仲・益母草・桑寄生などは皆降圧作用があると認められているから精神を鎮静し、降圧緩痛する効果があるのだろう。

【臨床挙例】（１）高血圧　『江西中医薬』（1959;10:19）：

　袁某某、男性、４３歳。主訴は一年を通じての頭昏。
治療前は毎日、午前８，９時に血圧を計って
８日間の平均は 154／105 mmHgで脈は浮滑だった。
本方を１剤与えたら血圧は 130／80 mmHgに下がった。
以後三週間服用して、その間の平均血圧は 131／85 mmHgで自覚症状は無くなった。

（２）メニエル氏病　『郷村医学』（1985,12:18）：

　徐某、女、３９歳。初めて眩暈が起こり、
メニエル氏病と診断され、治療を受けてやや良くなった。
今年の６月１２日に突然病状が重くなった。
頭暈目眩・耳鳴り・両太陽穴部位の疼痛・両目とも物が霞んで見え、建築物を斜めに見るとグルグル廻るようでぶあんなくて歩けない。
心悸・不眠・時々口渇し、尿は黄色、月経は正常、血圧 150／100 mmHg。
肥満型、舌質は紅、舌苔は薄黄、脈は弦数。
中医の弁証では腎陰不足・水不涵木・肝陽偏亢に属する。
治療法は滋水涵木・平肝熄風が良いと思われ、

天麻鈎藤飲＋熟地・枸杞子20ｇを前後１５剤与えたら
眩暈心悸・不眠多夢などの諸症はことごとく除かれ、病癒えて仕事に復帰した。

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