症例ＤＢ【検索目次】 ；
処方ＤＢ【検索目次】
【方源】『傷寒論』
【組成】呉茱萸・人参・生姜・大棗
【功用】（１）『普済方』：温裏助陽散寒
（２）『中医方剤学講義』：温中補虚・降逆散寒
【主治】胃中が虚寒して干嘔・胸満・涎沫を吐く者 ；
厥陰の頭痛 ； 少陰の吐利・手足逆冷 ； 呑酸。
現代では神経性嘔吐・偏頭痛・神経性頭痛・メニエール氏病 などで肝胃虚寒の者に用いる。
【臨床挙例】 （１）厭食 『傷寒解惑論』：
ある壮年の男性、毎日無理して食べてやっと３０〜６０ｇばかり、それでいて全く空腹を感じない。
健脾消導薬も効果がなく、胸悶するのみ。
脈は弦遅で舌質は正常、舌苔は薄白く粘膩である。
これは正しく胃寒挟濁に違いない。
呉茱萸湯＋神麹 （呉茱萸15ｇ） を試みた。
次の日、飲食が大いに振るった。
（２）嘔吐 『浙江医学』（1960;5:261）：
３０歳の男性、病歴３年、規律性の嘔吐で涎沫を吐く。
多数の薬物を用いたが無効で、Ｘ線撮影では瀑布状の胃であった。
呉茱萸24 党参30 生姜30 大棗５ケ 半夏12
１剤を服して嘔吐は止まり、更に２０数剤を服用し、
二ヵ月後の観察では再発はなかった。
（３）吃逆 『傷寒論方古今臨床』：
姚某、男、４３歳。毎食後に吃逆を発する。
吐くものは食べ物と涎痰で二ヵ月を経ている。
顔色は青白く元気なく、体は痩せ細り食べても美味しくない。
脈は細遅、舌苔は白潤、舌質は淡胖。
温中化飲・降逆止嘔を治法として
呉茱萸・茯苓 9 党参・生姜15 半夏 6 大棗５枚
３剤を服したら嘔逆はようやく止まり、
更に４剤を服して治癒を確実にした。
（４）眩暈 『中医雑誌』（1983; 9:43）：
女、６３歳。メニエール氏病にかかり二年、
最近はますますひどくなり、頭暈目眩してグルグル回り、
船に乗っているようだ。耳には蝉鳴が聞こえ、
清涎を嘔吐し、寒がって四肢が冷える。
舌質は淡、苔は白く厚膩、脈は弦細。
これは肝寒犯胃・濁陰上擾の証である。
温肝暖胃・升清降濁するとよい。
呉茱萸24 人参 9 生姜30 大棗３枚
１剤を煎服したら嘔吐・呻吟はようやく止まり、
安らかに寝入ることが出来た。
更にもう１剤を煎服したら起き上がって食事が出来た。
そこで上方を加減して
呉茱萸・半夏 9 党参・白朮・生姜12 陳皮・砂仁 6 大棗３枚
５剤を続服したら全ての症状は無くなった。
１２年間観察しているが再発していない。
（５）痢疾 『中医雑誌』（1983; 9:45）：
男、３２歳。細菌性痢疾にかかり二年になるが未だに纏綿として治らない。
ここのところ十日間ばかり希薄な下痢をし、
赤いのや白いのが混じっている。
一日５〜１０回とばらばらで少腹が隠痛する。
温め按ずるのを喜ぶ。
食欲はなく疲労し手足は冷えている。
舌質は淡、苔は白膩、脈は細弱。
脾胃虚寒・寒湿内蘊の病である。
これに温中散寒・燥湿健脾・渋腸固脱の治法をとる。
人参・艾葉炭12 呉茱萸・炮姜・罌粟殻 9 赤石脂24 蒼朮・白朮15 大棗５枚
２剤を煎服して下痢は止まり、５剤で癒えた。
後は参苓白朮散に改めて三年経っても再発していない。