407/407   GFB02043  養生堂            猫の肉で痿痺を治す
(13)   95/08/07 10:23

猫の肉は美味しくて、羊の肉の様な特有の臭いや野性の猫の泥臭さも無く、
且つ栄養価値が高く、風痺と痿証の治療によく効きます。

農民の許さんが風湿痺症を患い、かれこれ半年になります。
患者は普段から大変酒が好きで、病気中でも酒肉を切らしません。
まるでご飯がわりになっています。
家には一匹の老猫が飼ってあったのですが、
彼は老婆に猫を殺させて酒の肴にしてしまいました。
泥酔の如く酔っぱらい、翌日目が覚めてから腰を伸ばしたり体をひねっても
痛みが余りありません。
何と、あんなに痛かった肩や腿までがすっかり緩んでしまっているではありませんか。
そこで又続けて三毛猫を食べ、数日すると自由に歩けるようになりました。
治ってから10年経っても再発はしておらず、
至る所で経験談を説き、同病の者に薦めています。

1975年の夏、陳という若妻でしたが、性格がきつくて姑との仲が悪くて
遂に農薬を飲んで三度も自殺を図りましたが皆未遂に終わりました。
ただ三度目に生き返った後で下肢の痿痺が残り立てなくなり、
椅子に凭れたり人に支えられたりしてやっと歩いていました。
半月入院して後も自分一人では来れないので人に送って貰って治療に来ています。
葛根黄連黄岑湯＋卑解・土茯苓や
四物三妙湯＋青風藤・鶏血藤や
李東垣の清燥湯や、針灸や西薬の注射も併用しましたが、
半月以上経っても一向に効果がありません。
患者は悲観失望するし、我々も少し焦りました。
じっと思いを凝らしている内にふとあの事を思い出したのです。
そこで彼女に当帰と猫の肉で食物療法をしながら、
針灸も続けるようにと言っておきました。
一週間後、彼女が通院治療を終えて待合室へ戻ってみると、
送って来てくれた付添いの人は一寸用事に出ていて其処に居ませんでした。
皆で探しましたがどこへ行ったのか分かりませんでした。
彼女が又短慮を起こすのではないかとハラハラです。
電話で彼女の村へ問い合わせると直ぐに迎えにいくから待っているように
と言うことでした。
だけども何時まで経っても迎えが来ないので、
彼女は椅子に寄りかかったり、壁に凭れたりして病院の外まで出て、
同郷の顔見知りの人達が自転車に乗って帰って行くのを見ていました。
これは大変な進歩です。
彼女に言い聞かせて、又何回か続けて「猫肉当帰湯」を食べて貰いました。
すると奇蹟的に、三ヵ月後にはとうとう普通に歩ける程になりました。

家猫は軽敏に跳躍し、小虎をしのぐ。
虎骨は風痺の治療に卓効がある。
＜全国中草薬彙編＞の下巻には「家猫は食肉目猫科に属す。
肉は滋補・去風・解毒の功能があり、
虚労体疲・瘰癧・風湿痺痛・潰瘍及び湯火傷を主治する。
用量は 200〜 400ｇ。
猫の骨は解毒消腫・殺虫し、
瘰癧・水腫・虫積を主治する。
猫の肝も焼いて炭にし、粉末にすれば喘息を治す効果がある。
「猫肉当帰湯」は食療としても美味しく、
このように痿痺を治療する良方であるから、
更に研究されることが待たれる。

＜素問・五常政大論＞には既に「谷肉果菜は食養になるが、
採り過ぎて心を傷らないように」との論述があり、
飲食の養生によっては立派な療法になり得る事を教えている。
＜金匱要略＞の「当帰生姜羊肉湯」は久病虚羸と産後の調補の名方である。
中医は食療の方面に於いて沢山の優れた経験を持っている。
これの発掘に努め、研究を高めるよう期待される。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「南方医話」　朱清禄　より