423/423   GFB02043  養生堂            補薬を間違って飲んだら・・・
(13)   95/08/25 10:00

補薬を間違って飲んで気分が悪くなったり、苦痛を生じる事がまヽあります。
ここに紹介する胃痛の一例は温中益気薬を間違って飲んだ病案です。

病人は中年男性で、以前から胃痛（バリウムの診断で十二指腸潰瘍と）があったので
某病院で中薬の治療を受けることにしました。
その病院では丁度、黄耆建中湯加減の潰瘍治療について研究していた所だったので、
この病人にも本方を服用させました。
服薬して三日後に突然、頭暈目眩、船か車に乗っている様な気持ち悪さになりました。
潮声のような耳鳴り・悪心・煩急が襲ったので
又急遽、他の病院へ急患で入る事になりました。
内科・五官科の検査では異常が発見されず対症治療が施され、
次第にそれも収まってきました。
さて、又しても潰瘍治療薬を飲みはじめた所、
２剤後に再び上述の様な症状が起こりました。
その上更に便通が二日間なく、小便は黄赤色で、舌の辺と尖が紅く、
舌苔は黄膩で脈は弦滑、有力となっています。
私が行って診ますとそれは湿熱鬱蒸・中焦阻滞の証です。
すぐに前の薬を止めさせ、清熱利湿・化濁導滞を図りました。

三仁湯＋凉膈散加減：生苡仁・白豆寇・半夏・厚朴・枳実・黄連（冲）
　　　　　　　　　　・山梔子・霍香・佩蘭・滑石・竹葉・大黄

３剤で漸く症状が消え、後は脈・症に基づいて胃痛を弁証治療しました。

本例は湿熱交阻・脾胃失調が起こした胃痛であったのを
医家が弁証もせずに間違って甘温益気の品を与えた為に
湿を温め、熱を助ける事になってしまったのです。
湿熱が頭に上蒸した為に清陽が発散されず、頭暈目眩耳鳴りとなったのです。
湿熱が阻滞し、中焦が不暢になった為に悪心・煩急が現れたのです。
これは医家の誤りに外なりません。
このように弁証抜きの補薬だと害多くして利少なき事になります。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「燕山医話」　王恵英　より