429/429   GFB02043  養生堂            白血球減少症
(13)   95/09/05 10:14

白血球減少症は造血系統の難病の一種で、現在も満足な治療法はない。
近年来、各地の中医薬工作者は中医薬を本症に対して色々な角度から
実験研究してかなりの結果を得ている。

１．病因病機の研究
西医は本症をつくる主要原因は急性感染・理化学的原因であると認めている。
血液疾病および脾機能亢進・結締組織疾病・過敏性疾病・遺伝性疾病などは
中医学ではこれらの病名はなく、主症は「気血虚」「虚損」「温病」等の
範疇に属するものと似ているとしている。
中医学では本症は即ち先天稟賦の不足、後天の失養、素体の虧損、
或いは外感の病邪、或いは久病の誤治、
或いは気滞血於、＊徴瑕積聚、
或いは薬物による気血倶虚、陰陽失和、臓腑虧損の為す所としている。
一部の学者は現代理論と結びつけて本症の病因病機を
１）化学毒物の内侵、物理的原因の内傷、脾腎の直接損傷。
２）外感の病邪、邪毒が長引いた事、正気の耗傷。
３）素体の虚弱、精血の虧虚。
４）労倦過度、正気の耗損。　　　　としている。
以上の病因病機は相互に影響し、或いは前後同時に存在して本病を形成する。
更に放射線照射が個体の局部および全身に引き起こした反応から、
それは「熱毒」であるとする学者もいる。
多数の学者は、本症は五臓にわたるが、脾腎と特に密接な関係があると見做している。
脾腎の不足、血虚精虧が本症の生因である。

２．弁症論治の研究
本症の臨床表現に基づいて一般に５型に分類される。
１）気陰両虚：　益気滋陰　　　生脈飲＋当帰補血湯加減
２）心脾両虚：　補益心脾　　　帰脾湯加減
３）肝腎陰虚：　補益肝腎　　　帰芍地黄湯＋大補陰丸加減
４）脾腎陽虚：　温脾壮腎・補益気血
　　　　　　　　黄耆・党参・白朮・茯苓・熟地・山薬・補骨脂・仙茅・仙霊脾・
　　　　　　　　何首烏・鶏血藤・当帰・桂枝・菟絲子
５）外感温熱：　清熱解毒・滋陰凉血　　　犀角地黄湯＋玉女煎

４型に分けて論治する学者もいる。
１）心血不足：　養血安神　　　天王補心丹加減
２）脾気虚弱：　補脾益気　　　補中益気湯加減
３）心脾両虚：　培補心脾　　　帰脾湯加減
４）脾腎不足：　温補脾腎　　　右帰丸　或いは　大補元煎加減

更に本症を脾胃気虚・気陰両虚・脾腎陽虚の３型に分けたり、
脾虚気弱・腎虧血虚・気血双虚の３型に分けたりする学者がいる。
いずれも本症には虚証が多いとされる。
但し血虚が長引くと血於になるから、
補虚を治療の大法としながらも活血化於を補って顕著な効果を収めている。

３．単味中薬の研究
１）黄耆：報道によれば 150％の黄耆注射液を毎日２ ml.筋肉注射して
　　　　　各種原因による白血球減少症を治療して７〜17日で61.2％の患者に
　　　　　白血球の増加が 1000 ／ ml.以上となった。
２）黄精：単味黄精のみのブドウ糖液を用いて、
　　　　　肝炎や薬物による、或いは原因不明の白血球減少症を治療して
　　　　　総有効率が72.5％であった。
３）人参：末期悪性腫瘤の患者を放射線・化学療法剤で治療した結果、
　　　　　引き起こされた白血球減少症を、
　　　　　人参の茎葉のサポニンからなる錠剤で治療して、
　　　　　総有効率は82％であった。
４）女貞子：44種の外用薬および成分の「升白（白血球増加）」作用を
　　　　　　スクリーニングした中で女貞子は最も良かった。
５）鶏血藤：鶏血藤の単味製剤を用いて放射線治療によって起こった
　　　　　　白血球減少症を治療した結果、放射線治療を続けながらという
　　　　　　条件で、服薬後３日から患者の白血球は明らかに回復し、
　　　　　　停薬後もそれを維持した。
６）銀耳（白きくらげ）：銀耳の多糖類を毎日２回、１回１ｇとして
　　　　　　　　　　　　白血球減少症を治療した結果、
　　　　　　　　　　　　連続30日の服薬で有効率が86.2％に達した。
７）茜草：茜草ジアセテート (?)で白血球減少症を治療して有効率83.5％に達した。
８）刺五加（えぞうこぎ）：刺五加冲剤で各種原因による白血球減少症を治療して
　　　　　　　　　　　　　有効率は68.2％に達した。

この他、動物実験および臨床観察を経て升白作用があると思われる単味草薬には
枸杞子・川弓・苦参・虎杖根・班猫・三顆針・淫羊霍・巴戟天・補骨脂・熟地・
山茱萸・沙参・党参・白朮・玄参・古斛・鹿茸・桑椹子・麦門冬・大棗・当帰・
石葦・丹参などがある。

４．複方中薬製剤の研究
中医の基本理論に基づき、現代の薬理研究と臨床経験を結びつけ、
升白作用があると見做されるものは、

１）升白冲剤（黄耆・当帰・鶏血藤・補骨脂・茜草根・虎杖根・熟地・何首烏・陳皮）
　　89例の治療中、総有効率84.8％
２）升白糖漿（黄耆・党参・丹参・山茱萸・補骨脂・制首烏・鶏血藤・当帰・茜草根・
　　　　　　　山査子） 100例の治療中、治癒85例、好転11例、無効４例
３）鶏耆帰棗湯（鶏血藤・黄耆・当帰・大棗・熟地・淫羊霍・党参・山茱萸・補骨脂・
　　　　　　　　丹参・穿山甲・木香）
　　13例の治療中、治癒７例、顕効４例、有効１例、無効１例。
４）升白丸（黄耆・太子参・当帰・沢瀉・丹参・鶏白藤・石葦・陳皮）
　　二組に分けて観察した。一組は放射線治療と同時に升白丸を服し、
　　二組は放射線治療で白血球減少が始まってから升白丸を服し始めた。
　　その結果、１組は30例全てが放射線治療が完了しても白血球減少は
　　現れなかった。
　　２組は30例中、20例に白血球減少が止まり、明らかに回復現象が現れた。
５）霊芝カプセル：本症の治療52例中、顕効11例、改善12例、無効８例。
６）升白片（補骨脂・淫羊霍・胎盤粉・女貞子・山茱萸・黄耆・大棗・当帰・丹参・
　　　　　　鶏血藤・三七粉・虎杖根）
　　本症の治療 288例中、総有効率95.6％

　　　　　　　　　　　　　　　　　（中国中医薬報　1995.7.26.より）