463/463   GFB02043  養生堂            円形脱毛症の標本同治
(13)   95/12/25 14:48

円形脱毛症を中医では「油風」と言うが、これには謂われがある。
油とは脱毛した部分の皮膚が油を塗ったようにテラテラ光っているからである。
風とは病因病機のことで、毛孔が開いている時に邪風が侵入して、
風が盛んになり血が乾燥すると毛髪を栄養することが出来なくなり、
ちぢれたり、よじれたり、終いにはハラハラと抜けたり痒くなったりする。
名称の意味が分かると治療の助けになって良い。

この病気は突然に起こる。
「風はよく行り、しばしば変わる」という特徴がある。
皮膚が油光り、毛が束になって抜けたり、ひどくなると眉・髭・腋毛にまで及ぶ。
風淫には粛殺の気があり、秋冬には樹木の葉を散らす。
虫がモゾモゾと這い廻る様な痒みを皮膚に感ずるのは
血虚風動の兆しであって、痒い所は特に抜け方がひどい。
まるで枯れ葉が風に吹かれてハラハラと落ちるようである。
その病根は血虚で*湊理が緻密さを失い、これに風邪が乗じ、
加えて心腎が交流せず、肝が絛達を失した為である。
いわゆる精神の過度の緊張が風気を制することが出来ずに、
血の滋栄が足りなくて髪が栄養を失い、短時間で円形脱毛を生ずるのである。
だからこれは他の脱毛とは違い、俗称「鬼剃頭」というのも
そのせいで治療も難しいものだ。
治療法としては滋育肝腎・養血去風の神応養真丹＜外科正宗＞の内服とする。

熟地・当帰・川弓・白芍で養血和営する。
「髪は血の余り」であるから血が足りれば自ずと髪を生じ、髪を護ることになる。
菟絲子で補腎益精する。
「腎の華は髪にあり」、精が満ちれば髪を生ずる根拠ができる。
羌活・木瓜・天麻で*去風止痒する。
この方の天麻の量はかなり多い。
天麻は古くは「赤箭」の称があり、無風でも独りでに揺れている。
金属の気を受けて風が盛んだとこれを鎮め、風が弱ければ病者を益する。
剛柔造化の性は現代薬理でも毛髪の生長を促進することに現れている。

併せて外洗法として「香艾湯」を用いれば更に効果がある。
藁本・白止・艾葉・霍香・荊芥・甘松・防風・川弓 9ｇ
を水 300 mlで　20分間煮て、これで一日二回髪を濯ぐ。
１剤で二日間使う。
実験によれば本方には抗菌・抗アレルギー・ホルモン様作用がある。
内ではその本を治し、外では標を治す。
円形脱毛症22例と全禿１例はすべて満足な結果だった。
未だに円形脱毛症の特効薬が無い様であるので敢えてここに紹介した。
一助となれば幸いである。

　　　　　　　　　　　　　　　　　（中国中医薬報　1995.11.10  より）