495/495   GFB02043  養生堂            鼻淵
(13)   96/03/07 09:23

５０歳位の労働者で痩せ型、元気はなく、声に力がありませんでした。
一年前から前額が痛み、いろいろ治療を受けたが良くなりません。
「中医で治るでしょうか？」
「どれどれ」と詳しく聞いてみますと前額の他にも鼻梁骨や眉稜骨も痛む様です。
その上、鼻は塞がり匂いは分からず、味も分からず食欲がありません。
脈は弦数で舌質は赤く、苔は薄黄です。
「鼻淵ですね」
私は散風通竅・利湿清熱の為に辛夷散加減を使うことにしました。

辛夷・川弓・白止・蒼耳子・桔梗・麦門冬・藁本・菊花・木通・黄岑・玄参・甘草

３剤で前額及び鼻梁骨の痛みは軽減しました。
更に３剤、前額及び鼻梁骨、眉稜骨の痛み、鼻腔の腫痛は著しく減り、
濁涕は少なくなり、匂いも味も分かるようになりました。
また５剤後、諸痛は基本的に消失し、飲食の味が良く分かり、
元気が出てきました。
効き目をしっかりしたものにする為に更に１０余剤を勧めて完治としました。

「私は一年以上も患っていましたが、貴方の治療を受けて直に治りました。
原因は何だったのでしょうか？」
「貴方は風寒を外感して何時までも治らず肺竅が閉塞し、
肺気が宣降を失し鬱滞して熱化し、
温熱が薀蒸して脳に影響を与えるようになったのです。
清陽は升らず濁陰が上逆したのです。」
『霊枢・脈度』篇に曰く「五臓は常に七竅に因って上に通じています。
肺気は鼻に通じていて肺が和せば能く香臭を知る。」
ですからこの症は肺臓と密接な関係があります。
私は辛温芳香開竅を主とし、甘寒苦降・滋陰清熱利湿・升清降濁を
助けとして治しました。
肺気が宣降すると升清降濁して鼻淵は自ずから癒えたのです。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「北方医話」　張鳳舞　より