299/299 GFB02043 養生堂 中国の新聞から (1) (13) 94/05/23 12:01 中国的表現様式に馴れていないと少し抵抗がありますが、 よく読んでみるとやはり漢方では先進国、いろいろと学ぶ事が沢山あります。 この度もいらいらする気持ちをなだめすかして長文を解読してみました。 みなさんの興味を引けば幸いです、ご意見を聞かせて下さい。 「愛・母親として医師として」 −−中医師、郭念均さんの白癜風治療への道−− 彼女は北京中医医院の老人科の主任医師で、皮膚科の医師ではありません。 2 月24日、郭念均さんは完区政協会議の回診で部屋一杯の病人を診ていた時、 南京から来たある子供は「郭先生、私たちは一週間も前から待っていました」 と言うし、黒竜江の幹部は連れてきた12歳の子供と汽車を下りるや、 旅館に行く前に医院へ回り、分厚い資料を出して 「これは私が五年かかって色んな雑誌から集めた白癜風の資料です。 私と子供とでみんな試してみましたが、どれも子供の病気を治すことは 出来ませんでした。私達の経歴と貴女の経歴がそっくりなので私は貴女に賭けます」 と言うと、郭先生は満面に望みをこめたこの父親をよくよく見やり 「私の集めた資料も貴方のと同じ程でしょう。流した涙の量も変わりません」 そう言って深く彼を慰めました。 そうです、彼女には次の様な過去があったのです。 23年前、郭先生の二歳になる女の子が白癜風になったのです。 彼女は女の子が成長して学校へ行ったり職業に就いたり、所帯を持ったりするのに この顔は一体どうしたものだろう、と食べ物も喉を通らず夜も眠られずに悩みました。 彼女は女の子を連れて北京や上海をはじめ全国各地の大病院の名医を訪ね歩き、 偏方（単方）、鍼、西洋薬、割耳法、大蒜を潰して焼いて付けたり、、、 いろんなことを次から次へとやってみました。 子供は嫌がるし、彼女の涙が枯れ果てても白班は大きくなる一方でした。 真夜中に彼女は子供の小さな顔を撫でては、その手を自分の顔に当て、 夜が明けると彼女と子供は洗顔後同じ一つのタオルを使い、 白班が自分の方へ移って来るようにと願いましたが、 白班はピタリと子供の顔に貼り付いたままでした。 万策尽きた彼女は遂に「他人まかせではダメだ。自分の子は自分で治すしかない！」 と決意を固めたのでした。 1965年に北京中医学院を卒業してからずっと内科をやっていた彼女は 外科、皮膚科の専門書や図書館から集めた翻訳雑誌や資料をメモしていきました。 白癜風は中医では白駁風、西医では白班病と呼び、国内外でも未だに 有効な方法が無いと言われている頑固な皮膚病です。 だから従来の方法ではダメだと思い至るや郭先生は新たに中医の四大経典を学習し、 中医学の基本理論を研究し直し、中医薬で娘の病気を治そうと決心しました。 金元四大家の一人、朱丹渓の提出している「陽は常に余り、陰は常に不足する」 という学説で郭先生は大いに啓発された。 彼女は自分の妊娠中に二度流産しそうになったのを思い出した。 保胎薬で胎内に留めた子供は生まれて二ヵ月経たないのに直ぐ敗血症にかかった。 今又白癜風になっているのはこれは皆子供の先天不足、肝腎不足を表している。 彼女は子細に分析研究して白癜風の「風」は過去に中医が外邪の風と認識していたものは そうではなくて、これは陰血不足であり内生の虚風であると気が付いた。 白癜風は表面的には皮膚病であるが実際は内蔵病である。 肝は血を藏し、腎は精を藏する。 肝腎は同源で腎陰が不足すると精は血に化せず、肝陰虧虚となる。 肝腎が虚損して精血が不足すると皮膚は栄養を失う。 これこそが白癜風発病の真因である。 だから治療には去風辛燥の薬を用いてはならない。 「治風には先ず血を治せ。血が行れば風はひとりでに消える」という中医の理論に 照らして肝腎を滋補する方法を取るべきである。 方針が決まると彼女は当帰・女貞子・黒芝麻・白芍を主として処方を組んだ。 薬を一椀一椀と娘に飲ませた。動きが無いように見えたが、 彼女は堅く自分の観点を信じていた。 あヽ！ 15服が終わると白班上に小さな黒い点が現れ、それが次第に増え つながって片となり、二ヵ月後には白班は黒班に変わった。 黒班は又ゆっくりと色褪せ、遂に正常な皮膚の色に変わった。 一年後娘の病は完全に治った。 郭先生は娘に頬ずりして涙が止まらず、一生で最大の幸せに浸った。 郭先生が娘の白癜風を治したという噂が伝わるや無数の病人が治療を求めて集まった。 たった今痛苦の中から抜け出せたばかりの郭先生は当然彼らの心情がよく分かる。 自分の娘にしたと同じ様に彼らの治療を開始した。 ここから後は書ききれない程である。 1971年から現在に到るまで治療した数は一万例に及ぶ。 臨床の実践中に90％の病人に煩躁盗汗、腰腿酸痛、頭暈耳鳴、失眠多夢、口干欲飲等の 肝腎陰虚的な臨床表現があった。 この事は更に自分の観点の正しいことを証明している。 1979年から始めて彼女は数千例の病人に対して免疫機能の測定を進め、 免疫指数が等しく異常であることを発見し、 彼女が用意した滋補肝腎法による増免冲剤を服用させた後、これらの指標が いずれも改善され、免疫機能は明らかに高くなった。 この他に彼女は病理と電子顕微鏡の観察で、この療法で白班が消失した部位の 黒色素細胞内のメラニン顆粒の形成およびその表皮内の代謝に 促進作用があり、又能く微小循環を改善し、 細胞と体液の免疫機能を増強することをも実証した。 白癜風丸・増免冲剤を服用する外に彼女は又中薬の熱湿布合剤と外用霜剤を配し、 有効率は98％に達し、治癒率は30％に達した。 1989年、彼女の研究は北京市中医管理局の評価を受け、科技進歩一等賞に輝いた。 同年彼女は日本の中医薬研究会の招きを受けて日本へ行き、三ヶ月間にわたり 学術交流した。講演の都度、熱烈な拍手はなかなか鳴りやまなかった。 世界でも著名な生物遺伝学者で、動物の色素細胞の起源及び生物学的研究に 専門的に従事している牛満江教授が1991年に北京を訪れ、 郭先生に特別に治療をして貰ったのですが、 一年後に再び北京へ来た時には、顔の白班はもうすっかり消えていました。 現在、郭先生は老年科に在籍しておられますが、毎週三日半は白癜風の 診察をし、多い時は午前中だけで70人も診ます。 彼女は一人ひとりの病人に対していずれも熱心で子細で真剣です。 全国各地からの病人はどの一人も皆大変難しいのですが、 彼らが明日また出直すことの無いように、 病人全部を診終わる迄は決して仕事を中止しません。 力を尽くして彼等の要求に答え、薬を持たせます。 幾人かの病人は感激の余りお金や物をお礼に送りますが、彼女は一一お断りしています。 ある黒竜江の病人の家族が手紙で言ってきたのですが、 郭先生は送ったお金を受け取らずに、 「病を治し、人を救うのは私達医者の天職です。 このお金はお子さんの治病の為に使って下さい。 お子さんの病気が良くなれば、それこそが医者たる者の最大の喜びですよ」 と言うばかりだったそうです。 郭先生は診察の外に病案を整理し研究をし、 毎日全国から来る十数通から数十通の手紙に返事を書かなければなりません。 最後に彼女は次の様に言っています。 「ここ数年私にはテレビを見る時間もありませんが、 学術水準をより高める為に、治療効率をより高める為に更に努力を しなければなりません。20数年来、私が持っている最大の財産は病人です。 だからもっと沢山の病人の為に尽くすことが最大の楽しみなのです」 1994.3.28 中国中医薬報より （注）『中国中医秘方大全』の白癜風の項に朱光斗先生の処方で 「白班烏黒湯」というのがあります。 これは郭念均医師の処方を改良したもので次の様な内容です。 〔沙苑子・女貞子・黒芝麻・疾藜子 15 覆盆子・枸杞子・赤芍・白芍・川弓・ 何首烏・当帰・地黄 10 〕 150 例の治療で、総有効率98％、治癒率9.5 ％、顕効率33％、有効率55.9％ 毛髪諸共に白くなったものが最も良く効いたので、こういう命名になった由。