260/260   GFB02043  養生堂            柴胡の量
( 2)   95/06/28 09:50

張某が私に付いて研修中のこと、
「臨床で柴胡を用いても効かないことがしばしばあります。
肝炎の末期患者で肝脾が腫大して腹脹、脇痛、食欲不振があったので
先ず柴胡疎肝散＋鬱金・延胡索・丹参を出しましたが、
病人はこれを飲むと嘔吐しますが......。」と尋ねました。
私がその処方を見ますと柴胡を12ｇ使っています。
私は言いました。「柴胡の働きを知っていますね？」
「ハイ、疎肝です。」
「そうです、でもね、柴胡は大量に用いると中気を提升してしまい、
疎肝することが出来ずに却って肝気が上の胃の働きを乱すのです。
それで服薬すると嘔吐したのです。
疎肝のためには柴胡は６ｇが良いでしょう。
特に肝脾腫大した肝硬変の末期では肝陰は既に損なわれていますから
過剰に用いると肝陰が根こそぎ奪われてしまいます。」
彼は私の言うことを守って柴胡を６ｇに改めました。
果せるかな嘔吐はしないで十日ばかりで症状に改善をみました。

またある産婦を診た時の事です。
顔色は黄色く体はブヨブヨで動くと喘ぎ、虚汗が淋々と流れ、
腹脹して腹は下り、疲労倦怠しています。
張さんは補中益気湯を処方して色々加減したのですが、
五剤飲んでも効果が出ません。
「薬も証も合っているのにどうして効かないのでしょうか？」
「黄耆と柴胡の量が少ないからです。
柴胡で中気を提升したければ大量用いなければなりません。
若し服後に腹脹するならば陳皮を増やせば解消します。
同時に桔梗・升麻も適当に増量するのが良いでしょう。」
かくして五剤飲んだら腹瀉は三回に減り、
体力も増えてきたのでそのまま続服するようにと言い、
十余剤で健康に復しました。

　　　　　　　　　　　　　　「黄河医話」　畢福高　より